身体的遠隔コミュニケーション空間を実現する 4 ~メディアを介した多人数対話のメカニズムの解明~
人間同士のコミュニケーションでは,視線が重要 な役割を果たしている.
さらに石井らは,共有画面に対して,手振りだ けではなく遠隔対話者の顔も重畳できるシステム ClearBoard を開発した 4).このシステムでは撮影方 法を工夫することによって,描画画面や対話者に対 する視線を正しく伝えられるようにしたため,対話 者の理解や意図を正しく認識することができるよう になったのである.石井らはこのような視線に対す る「気づき」のことを gaze awareness と名付けた. 空間を超えたgaze awarenessはこれが実現した
時間を超えたgaze awarenessなどのインタラクションの障壁は?
まず申し上げておきたいのは,コミュニケーショ ンを支援するシステムを開発するためには,支援対 象となる人をよく理解しなければならないというこ とである.人々の日常的な行動様式を理解しなけれ ば,効果的な支援システムの設計は難しい.そのた めには,分析・評価をおろそかにすべきではない. たとえば理想的な手法の 1 つとしてよく言及される のは,実験・観察,分析・評価,システムの試作・ 開発を繰り返すことによって徐々にシステムを改善 する繰り返し手法である(図 -3)3).
いや〜〜、そうだよなblu3mo.icon*2
机上の空論を立てるには複雑すぎる対象
ここで注意し なければならないのは,単に映像や音声を相互通信 するだけでは,効果的なシステムを生み出せないと いうことである.視線,手振り,そしてさまざまな 身体動作などの,コミュニケーションにおける身体 的な資源(resource)を,いかにシステムに融合させ るかということを,常に意識する必要がある. 繰り返しになるが,今後のシステム開発において は,分析・評価をおろそかにすべきではない.技術 開発的研究と分析的な研究がバランス良く進められ ることによって,初めて有効性の高いシステムが開 発できるし,他の研究にとって意義のある知見を残 すことができると考えている.10 年後のマニフェ ストは,なんらかのシステム開発ではなく,「メデ ィアを介した多人数対話のメカニズムの解明」と言 ってもよいであろう.